3−3 こんな奴だけど

「僕は男です!」
寮内に響いたその大声に春海が玄関口に走ってきた。
「どうした?誠伍」
「春海。お前どこ行ってたんだ」
お前は寮長の癖に責任感がなさ過ぎるぞ、と説教しようとしたところで今の状況を思い出しそれはやめておいて。
「まぁちょっとな」
簡潔にしかし具体的な返答はしないでおいて玄関に立っている阿貴を見やる春海。
「その子に何かやったのか?」
そこで返ってきた質問に誠伍は呆れて、
「お前じゃないんだ、するか、そんな事」
にべもなく返した。
失礼な事を言う奴だな、と春海が言おうとしたところを制して、誠伍が今の状況を説明した。

「なるほどな。それで、君、名前は?」
一通りの説明を受けて(寮を間違えてきたと勘違いしてしまったと言っただけだが)春海が目の前のかなり小柄な少年に問う。
「…宇都宮阿貴です」
阿貴はそう答えて鞄の中から入寮手続きの書類を取り出し、目の前の寮長に手渡した。
春海は誠伍とともにそれを見比べて、
「ん…やっぱり本人のようだな。さっきのは、確か西条、と名乗ってたし」
「すまない、さっきは失礼なことを言った」
書類と見比べて阿貴が男であることを認めると、

(この子か…これは面白いことになりそうだな…)

春海は、言葉には出さずに心の中だけでそう思った。
しかし、それを阿貴に悟られては、台無しになる。
そう思い、一度それを封印して、
「それじゃ、部屋に案内するから…っと、その前に」
と、一度部屋に向かいかけたその身を翻して阿貴に向き直り、
「オレがここの寮長になった2年の相木春海。で、さっき君に失礼なことを言ったこいつがオレのルームメイトで生徒会の副会長をしている堀居誠伍」
春海の紹介を受けて誠伍がよろしく、と声をかける。
「そして、そこにいる彼女が、向かいの碧林寮の寮長の島霧子。彼女はオレのステディでもあ…」
にやけ顔で紹介された彼女の肘鉄が春海の台詞を最後まで言わせぬうちにそのわき腹にめり込む。
無防備なところへ一撃を食らい、悶絶する春海をよそに、
「誰がステディなのよ、余計なこと言わなくってもいいのっ」
さらにきつい一言を叩き込む霧子。
そしてその後を引き取って続けて、
「まぁこんな奴だけど、あくまでも一応ココの寮長だからよろしくしてあげてね。じゃ、堀居、この子の案内、よろしくね。私、帰るわ。長居しちゃった、おほほほ」
霧子はそう笑って、この場を後にした。

To Be Continued...

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