Scene 3 Start

その事実を知ったのは、まだ中学に上がるかどうかのときだった。
本当に偶然に。
両親から聞いたのではなく、ふとしたきっかけで知ってしまった事実。

自分が本当の子供ではないと言う事実は。

ただ、それを知ったところでまだ幼かった自分には、何をどうすることも出来なくって。

それでも、普通の家庭となんら変わらずに、普通の家族として過ごしては来たけれども。
今更その関係を変える意思などないけれども、その事実は彼の心に影を落とした。

だから。
寮がある青碧へ行こうと思った。
とりあえず家を出て、家族から離れていたかったのだ。
自分をここまで育ててくれた家族は確かに大事だけども。
そのまま甘えているわけにも行かない。
ならば、事は早いほうがいい。
そう、考えたから。

3−1 二人は友達

名門校としてその名を知られる青碧学園。
そこは、日本全国津々浦々からさまざまな個性溢れる学生がこぞって集う学校でもある。
そんな学生たちを受け入れるのに、寮があるのは当然のこと。
学生寮には、それぞれ学園の名前を冠した名称がつけられている。
男子寮は「青」、女子寮は「碧」と言う具合に。

そして、時は4月。
新たな学生たちの入学を機に、寮でもその受け入れ態勢を整えるのに忙しい時期だ。
そんな最中のお話である。

「〜〜♪」
高等科男子寮・青光寮の一室にて。
椅子に座ってゆっくりと音楽を聴きながら細い形のいい指先でリズムを取る少年が一人。
背中まで伸びる亜麻色の長髪を頭の後ろでポニーテールのように纏めて括っている。
少年、というよりその顔立ちは少女のような幼いあどけない顔つきで、一目では男だと思われない外見の持ち主。
そんな彼、阿久津成美が部屋のノックされる音を聞いたのは、正午を回るかどうかの時間だった。

「成美、いるか?」
ノックの音とともに入ってきたその声に、成美は振り向いて、
「いるよー、入っていいよ?」
と、言った。
入るぜ、と一声かけてがちゃりとドアを開けて入ってきたその男は、平均的な男子高校生の身長で、髪型は癖のある天然パーマ、目鼻立ちのすっきりした顔で一目人気アイドル風なイケ面。
名前を相木春海という。二年生だ。
「どしたの?春海」
この年代に反して幼い口調で問いかける成美。
春海は、成美に近づいてそっと一言。
「喜べ。今日お前のルームメイトがやってくるぞ」
「ほんと?」
その言葉にぱあっと顔を輝かせる成美。
寮の部屋は基本的に2人部屋なのだが、この日までは訳があって成美が一人で暮らしていたのだ。
「うれしーvv春海ーありがとっ!」
ハートマーク付きで大喜びで春海に抱きつく成美を落ち着けとばかりに引っぺがして、
「それでだな…1つ相談なんだが…」
春海は、成美に何事か囁いた。

To be continued...

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