2-6 その後…


そして。
合格発表も終わり、唯貴は翔子と、阿貴は秀人とともにそれぞれの家路につく。
碧駅に付いた阿貴と秀人の二人は、そこで先に帰ったはずの一樹と出くわした。
「一樹!何やってたんだよ!いきなり逃げ出すなんて!」
駆け寄って、そう声を掛ける阿貴。
「お前らしくねーぞ、一体どうしたんだ?」
後を追いかけてきた秀人が続けた。
二人の様子に一樹は、
「お前ら…マジで知らねーのかよ?アイツの事」
「「何がだよ!」」
一樹のこの物言いに、同時に突っかかる二人。
と、そこで一樹は神妙な顔つきになって。
「藤村翔子…アイツは超天才少女って有名なんだぞ」

一樹の話によると。
翔子はIQ300を数える天才的頭脳で新聞にも名前が載ったことがあるそうだ。
そのために今からでも一流と言われる大学に合格できると言われるそうで、(それも国内外問わずに)
だが。
確かにその数字には驚いたが、そんなことくらいでこの一樹が逃げ出すとは二人ともとても思えないわけで。
それだけじゃないだろ?
言葉に出さずに詰め寄る秀人と阿貴。
そんな二人に一樹はさらに続けた。
「この前新聞に載ってた、白嶺中に暴走族が乗り込んできた事件、覚えてるか?」


白嶺中の事件とは。
二学期のときに地元の暴走族のメンバーが白嶺中にいて、彼がそこの族を抜けるとかで揉めたという、そんなトラブルから始まる、ありがちな話で。
それに腹を立てた連中が学校に乗り込んできて暴れまわって、最終的には警察に捕まったそうだが。

「そういえば、親父が煩かったな。お前もこんなことで新聞に載るんじゃないって。人聞きの悪いったらありゃしねえ」
と、言うのは秀人。
秀人の家は祖父も父も兄も警察官なのだ。
そのためにこういう事件の情報は人よりも早い。(勿論守秘義務があるのでそれを言う相手は数限られているが)
秀人は学校一の不良と言われてはいるが、そういうバカな連中とは付き合いはない、と言うか群れて他人に迷惑を掛ける行為は寧ろ嫌悪しているくらいだ。「人聞きの悪い」とはそういうことである。
「それがどうかしたの?」
きょとん、と首を傾げて言うのは阿貴だ。
良くぞ聞いてくれた、とばかりに一樹は、
「アレの真相、教えてやるよ」
と、言った。

そして一言。

「あの時、あいつらぶっ潰したのが、あの藤村翔子なんだよ」

その言葉に、二人とも信じられない、と言った表情を浮かべる。
そして全く同じ言葉を全く同時に。
「「……嘘だろ?」」


新聞に載っていた記事によると暴走族は20人からいたはずで。
多少誇張が入っていたとしても女の子一人でそいつら全員を潰せるとはそれこそとてもとても思えない訳で。
そんな二人の当たり前といえば当たり前な反応に一樹は続ける。
「オレも嘘だろ、って思ってたがな。白嶺の奴に聞いたんだよ」
「でも一体何で…」
当然の疑問を浮かべる阿貴。
それに一樹は、一言。


「実は…ほんの暇つぶしだったらしい…」

その言葉に二人とも固まることしばし。
いくら何でも。
暇つぶしに暴走族ひとつ丸ごと潰してしまうなんて。
そんな事ありえるのか?
二人はまたしても全く同じ言葉を全く同時に。
「「………ハァ!?」」
「それってまさか、彼女一人でって訳じゃないよね?」
阿貴の問いに一樹は黙って首を横に振る。
「ありえねえ…」
と呟くのは秀人。


とは言ってみたものの。
自分の学校のみならず、他校の情報に詳しい情報通の一樹の話。
ほとんどビョーキ(古)なほどの蓄積を誇る一樹のデータ、疑いきれないわけで。
「彼女は医者の娘だからな。それであれだけの頭だ、人体なんて治す壊すまさに思いのままらしいぜ」
それだけじゃないだろうけどな、と最後に付け加えて一樹は言った。


「どうでもいいことだけど、何で一樹、そんなの覚えてるんだよ?」
阿貴のこの問いに一樹は、
「女の子のデータなら任せておけっての」
と、笑って答えた。


…なんでそんな奴が僕のことをそこまで知ってるんだ…
阿貴はますますわからなくなった。
僕と一体どんな関係?
彼女はあの時、「いずれ教えてあげる、それは今じゃないけど」と言った。
それは何時なのか?
何故今じゃないのか?

そして。
「偶然じゃない」唯貴との出会いとは?
正体不明の藤村翔子、自分とそっくりな西条唯貴、ここ最近わからないことばかりだ、と阿貴は思った。 


To Be Continued...

Back

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送